ふらふら、ふらふら

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今年の全国学力・学習状況調査の結果を読んで、気にかかったところ

 いつの間にか今年の全国学力・学習状況調査の結果が公表されていた。都道府県・市区町村ごとの学力ランキングにしか関心のない人も多いこの調査。質問紙調査もあって、子どもの生活の状況などについての調査もされている。質問紙調査の結果と、学力調査の平均正答率のクロス集計もされていて、読めば結構興味深いものである。

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 さて、わたしはちょっと意地悪な指摘をする。なお、ここからは、中学校の結果のみを取り上げる。

 まず、携帯電話・スマートフォンを持っていないと、逆に平均正答率が下がる。おおむね、携帯電話・スマートフォンでSNSや動画視聴を平日に30分から1時間程度する生徒の平均正答率よりも、携帯電話・スマートフォンを持たない生徒の平均正答率は低い。単純に携帯電話・スマートフォンを持たせなければ学力が上がるわけでもないようだ。

 さらに、平日の読書の時間と平均正答率のクロス集計結果によれば、平日に読書を2時間以上する生徒の平均正答率は、平日にゲームを2時間以上3時間未満の間遊んでいる生徒の平均正答率とだいたい同じくらいで、平日にゲームを1時間から2時間遊んでいる生徒の平均正答率よりも低い。ゲームをやめて読書をしたところで、学力が上がるわけでもなさそうである。単純に、どんなことでも長い時間やれば、学力に影響する。

 続いて、休日にどのような活動をすることが多いかとの質問に対する回答と平均正答率の関係。ざっくり言って、部活動をしていることが多いと回答した生徒の平均正答率と、ゲームやSNSなどをしていることが多いと回答した生徒の平均正答率はほぼ同じ。ゲームやSNSなどをしていると回答した生徒の平均正答率のほうがやや低いが。スポーツをしていることが多いと回答した生徒の平均正答率は、ゲームやSNSをしていることが多いと回答した生徒の平均正答率よりも低かった。そうすると、「スポーツは学力低下を招いている」とも言える。誰も言わないけど。

 と、いろいろ指摘してきたのだが、最後に根本的な問題を。どのような調査も、調査を実施する主体の意図がある。調査を実施する主体が、調査によって何を言いたいか、それに沿って質問が編集される。今回の調査で言えば、おそらく、ゲームやSNSを長時間していれば学力が下がる(だからゲームやSNSを制限しよう)と言いたいがために調査をしているわけだ。なので、間違っても、スポーツをすれば学力が下がるなどとは誰も言わない。そもそも、この調査で測られるような学力が高ければ高いほど幸せであるとの価値観も、必ずしも普遍的なものではない。わたしは、この調査の価値観そのものが普遍的ではないと問題提起をしておく。

 なお、調査を実施する主体が何を言いたいかが先にあって、それを証明するために数字を集めることについては下記ブログ記事が指摘している。ずいぶん古いブログ記事であるが。

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