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公共事業とされる道路、営利事業とされる鉄道

 昨日、JR北海道が提案していた、留萌本線廃止の方針を地元自治体が受け入れるとの報道があった。

digital.asahi.com 留萌本線には、深川留萌自動車道が並行している。この深川留萌自動車道の評価結果を見ると、道路と鉄道の扱いの違いが見える。

 深川留萌自動車道の評価結果は国土交通省北海道開発局留萌開発建設部*1及び北海道開発局*2のサイトで見ることができる。深川留萌自動車道は、深川沼田道路、沼田幌糠道路、幌糠留萌道路の三つに分かれて事業化されており、評価結果も三つに分かれている。このデータを見ると、事業費が1,967億円、維持管理費が50年間で166億円とのこと。50年分のデータを利用していることは、「バックデータ」を見ればわかる。とにもかくにも、深川留萌自動車道には、これだけの国費が投入された。一方、事業の効果は、走行時間が短くなったことや、走行経費や交通事故が減ったことによる利益が金銭換算されている。公共事業なので当たり前だが、通行料金で採算が取れるかどうかは評価されていない。それ以前に、深川留萌自動車道の大部分の区間は通行料金がいらない。

 一方、留萌本線を残すかどうかの評価は、維持管理費はともかくも、利益は運賃収入のみとなっている。JR北海道は、留萌本線を維持するとしたら、赤字は自治体で負担してほしいとしていた。営利事業とされているからこうなる。

 ここに、鉄道と道路のあまりの違いの差を見る。通行料収入など期待せず、移動時間が短くなるなどの利益が出れば、国費を投入する道路と、運賃収入と自治体負担で維持することを求められる鉄道。これでは、鉄道に分が悪い。ここで問いたい。本当に、鉄道は営利事業としてのみとらえればいいのか。インフラの一つとして公共事業の枠の中でとらえ直す必要はなかろうかと。鉄道の公共性があまりにも軽んじられている。

 もっとも、留萌本線の費用便益分析を、深川留萌自動車道と同じ条件で行っても、深川留萌自動車道よりも費用対効果は悪いとの結果が出るのかもしれない。わたしは専門家ではないからこの点に深入りはしない。ただ、鉄道も公共インフラとして、しかるべき位置づけがなされなければならないと言いたいのだ。

 ここからは余談。道路を使った自動車輸送はほんとうに安上がりなのか。実際には誰かが何らかの形で費用負担しているものが、はっきりと見えていないだけではないのか。この点について、宇沢弘文「自動車の社会的費用」(岩波書店岩波新書〉、1974年)が論じていると知ったが、わたしは未読である。それでも、一点だけ指摘しておく。トラックドライバーの長時間労働と低い所得が問題になっている。そのことからすると、トラック輸送の費用は、不当に低い価格が付けられているのではないか。本来はもっと高い費用がかかっているのではないか。

【追記】

 書いて間もなくこのニュース。

digital.asahi.com 営利事業としてとらえ、運賃収入と地元自治体負担で維持するよう求めるなら、当然こうなる。外部にもたらす効果がいくら多かろうと、自治体の手に余ることだ。公共事業としてとらえれば外部にもたらす便益は極めて大きいのだが、そのために地元自治体だけが負担するのは理にかなわない話だ。鉄道を公共インフラととらえるか、営利事業ととらえるか、そのことが問われている。