ふらふら、ふらふら

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ゲーム関連健康障害は実在すると書いたが、迷いはある

 ちょっと前にこの記事を書いた。

syou-hirahira.hatenablog.com この記事を書いたときに念頭にあったのは、スポーツにのめり込むことによってさまざまな健康障害をもたらす状況だった。スポーツ関連健康障害のもっとも悲惨なレポートが、「魂まで奪われた少女たち : 女子体操とフィギュアスケートの真実」(ジョーン・ライアン著、川合あさ子訳、時事通信社、1997年)だ。「魂まで奪われた少女たち」に登場する幼きアスリートたちの姿は、不健康と言うほかなく、医療の介入が必要だと見えた。そして、そのような状況との連続性を考えると、ゲームに過度にのめり込むことも医療の介入が必要な状態であり、何らかの障害と分類されるのはもっともなことだと考えた。

 ところが、それでも、迷っている。アメリカ精神医学会が作成した精神疾患の診断・統計マニュアルの第5版(DSM‐5)の冒頭にある、精神疾患の全般的定義を読んで迷っている。この全般的定義は、文化的に許容された反応は精神疾患ではなく、また、社会的に逸脱した行動も個人の機能不全の結果でなければ精神疾患ではないとしている。果たして、スポーツに過度にのめり込むこと(そしてゲームに過度にのめり込むこと)は、単なる社会と個人の葛藤なのだろうか?それとも医療的ケアが必要な疾患なのだろうか?社会と個人に葛藤がある状況を「精神疾患」とラベリングしているだけではないかとの説(わたしはそのことを「BBC精神医学診断実験」を見てその説はもっともだと考えた)も踏まえると、なおさら迷う。

 さしあたっては、スポーツやゲームにのめり込む状態を、「悩み以上病気未満」ととらえるのが穏当に思える。また、DSMやICDのような精神疾患の分類に載せられている「障害」の中には、「病気」であるもの、「病気」でないものの両方が存在することを踏まえておく必要はある。

 ただし、久里浜医療センターの樋口進氏は明らかに先走ったことをしているとは、迷いなく断言できる。ICDに掲載されたてほやほやの「障害」で、そんな簡単に原因がわかるはずもなければ、予防法もわかるはずもない。

追記

 フィギュアスケートの世界では今でも子どもを追い詰める指導が行われているようだ。朝日新聞デジタルが連載していた。わたしが念頭にあるのはこのような状態に置かれた子どものことで、そのような子どもたちとの連続上にゲームにのめり込んだ子どもを見ている。

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