ふらふら、ふらふら

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誰が10代中盤過ぎの青少年の「保護」を担うのか

 「バイク3ない運動」なる運動がある。全国高等学校PTA連合会が各教委に要請して、高校生がバイクの免許を取らない・バイクを買わせない・運転させないようにする運動である。関東では最後まで続けていた埼玉県がついに2018年に取りやめて、関東では終息した。

 ところで、この運動、大きな疑義がある。それは、対象が「高校生」限定であることだ。16歳から18歳くらいの青少年の運転が危険なら、高校生に限らず同年代の青少年がバイクに乗らないように、運転免許取得年齢を引き上げる必要があった。ところが、それはしなかった。全国高等学校PTA連合会も、運転免許取得年齢を引き上げるよう求める請願を国会に出すことはしなかった。これは非常に理解に苦しむ。同じ発達段階にあっても、高校に在学していない青少年を放置したことになる。

 ここには、15歳になったあと18歳になるくらいまでの青少年の「保護」を誰が担うのか、そのことに関する矛盾がぎゅっと詰まっている。中学校を卒業したと言っても、まだまだ「保護」が必要な青少年であることはわたしにとっては疑いもない。そして、そのような必要に応じて、高校は「保護」を提供してきた。18歳くらいまでの青少年の9割くらいが高校に在学している現状ではだいたいそれで間に合うが、それでも高校に在学していない青少年は少なからずいる。高校に在学していない青少年は、高校が提供する「保護」から外れている。同じ発達段階でも、高校に在学していなければ「保護」の必要がなく、高校に在学していれば「保護」の必要があるとでも言うのか。ナンセンスこの上ない。

 18歳になるくらいまでの青少年に「保護」を提供するのがほとんど学校だけであることの矛盾がもっともグロテスクに現れたのは、2019年の児童虐待緊急点検だ。千葉県野田市で小学4年生の子どもが虐待で亡くなったことを受けて、子どもの安否確認が行われた。その安否確認を行ったのが学校と一部の福祉施設保育所認定こども園、障害児通所施設)であった。文部科学省のサイト*1にあるペーパーから、緊急点検を行ったのがどのような学校と福祉施設であったか、引用する。

・国公私立の幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校通信制課程を除く)中等教育学校通信制課程を除く)、特別支援学校、高等専門学校(第1~3学年)、専修学校の高等課程通信制課程を除く)
保育所、地域型保育事業の事業所
認定こども園(幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型)
・障害児通所支援事業所(児童発達支援、医療型児童発達支援、居宅訪問型児童発達支援を実施している事業所(共生型事業所、基準該当事業所を含む))

 高校であっても、通信制課程(通信制高校)の生徒はそもそも対象から外れていた。そして、高校に在学していない青少年も、対象外だった。よりシビアな状況にあることが予測される、高校に在学していない青少年は、この緊急点検の対象外だったことになる。高校に在学していない青少年が虐待で死のうがどうなろうが知ったことではないと言わんばかりのあまりにもグロテスクな線引き。

 ここで問う。中学校卒業後18歳くらいになるまでの青少年の「保護」は、一体誰が担うのか。