ふらふら、ふらふら

あっちこっちふらふらしている人間が何かを書いてます。

化学物質過敏症のみなさんへ~いち精神科ユーザーからの手紙

はじめるまえに・病名について

化学物質過敏症」には、ほかにもさまざまな呼び方があるようですが、ここでは、「化学物質過敏症」と呼ぶことにします。

原因もはっきりした見解はないようですから、ここ30年ほどの精神科業界のしきたりに従って、症状を要約した名前である「化学物質過敏症」が適切かと。以下、「化学物質過敏症」は、「症状の名前」として読んでください。

「症状の名前」ですから、実際に隠れている病気は化学物質によるものではない可能性も大きいとの意味をも持たせております。

はじめに

私、もともとは、「ブラック校則」に反対するだけの一活動家(ってほどではありませんが)でした。合法先生の次のツイートにぶら下がっているリプライを見て驚いたのです。

https://twitter.com/barbeejill3/status/1131528572676366336

化学物質過敏症」を理由に、このような校則を必要なものと賛成される方が多くみられました。信頼できる医学情報を見ると、どうやらまるっきり逆のことが書いてありました。

そこから、皆さんと論争になったのです。言い訳にもなりませんが、そのときは「ブラック校則」反対で精一杯だったのです。みなさんが抱えていらっしゃる苦痛には目が向きませんでした。

誰だって、自分が病気になれば、「早く」「負担なく」「安楽に」治したいと思うはずです。みなさんも、自分が抱えた苦痛から逃れるために必死だったのですよね。そのことに目が向かず、本当にごめんなさい。

みなさんは、ご自身の主治医から指示されたとおりの発言をされていただけのはずで、ですから、みなさんを問い詰めるのではなく、医師を問い詰めるべきだったのです。

病気を「早く」「負担なく」「安楽に」治療するために知恵を絞らなければならないのは医師です。医学とはとても難しく、なんでもひとりだちするまでに医学部に入学してからおよそ10年くらいは修行するとかで。

それくらいに医学は難しいもののようです。しかも、医学にもわかってないことはたくさんあって、それこそ日進月歩の勢いで進歩しています。だから、医師は医師を続ける限り、ずっと勉強しなければならない。とてもじゃないけれど医学の素人が軽々に口を出せる問題ではないと考えました。

皆さんが自分の病気をよくしようと必死なのはわかります。それがたとえ間違っていたとしても、自分なりに一番いいと思うことを選んで戦っているのですよね。その気持ちは否定しません。

そして、その戦いを早く終わらせるよう知恵を絞るのは、医師です。目の前のあなただけではなく、周囲の人たちに指導をするのも、医師の仕事です。あなた自身が、消耗するだけの論争をネットで挑まなくていいのです。そのための知識と技術を修行して身に付けています。さらに、医師には医師のネットワークがあって、あなたの目の前の医師の後ろには、全世界の医師がついています。全世界の医師が、あなたの抱えている苦痛を一日でも早くなくそうと、苦心しながら知恵を絞っています。医学的なことは、医師にお任せしましょう。

しかし、世の中には「ハズレ医者」というのもいます。できないことをやっちゃう医者だとか、いきなり説教をする医者だとか。そんな「ハズレ医者」は、大学病院にもいます。公立病院にもいます。最近の例では、埼玉県の草加市立病院の産婦人科の医者が、できもしない手術を無理に強行したことがありました。しかも、市の広報にまで、そんなできもしない手術を派手派手しく宣伝していたのです。市の広報すら必ずしも当てにならないのです。

ここで朗報を。医師を見る確かな目を、医師は持っています。あなたががんばらなくても、他の医師なら、ハズレ医者を見分けられます。

ですから、知恵さえあれば、「ハズレ医者」を避けることはできます。自慢ではないですが、診察券が束になるほど医師にかかってきた自分が、自分なりの体験から見い出した「ハズレ医者を避けるための知恵」をお伝えします。

ハズレ医者を避けるために・実践編

いい医師の条件を考えてみると、最低限次の3つは必要だと思いました。

・親切であること

・できないことをやらないこと

・勉強熱心であること

医学は日進月歩、わからないことはたくさんあるのですから、医師は、自分に知らないことはたくさんあると知ってなければなりません。その謙虚さがない医者は間違いなくハズレ医者です。

また、病気の治療は医師と患者の共同作業です。いきなり説教をするような医者にかかってたら、治るものも治らない。そんな医者とはおつきあいしたくないものです。

では、実際にどうサバイバルするか。ここからが本当の実践編です。

・まず、最初に受診したい医療機関を見つける

インターネットで探してもいいですし、電話帳で探してもいいです。なんか気に入ったところがあれば、そこにかかるのがよいでしょう。

セカンドオピニオンを受けたい医療機関も決めておく

これも、ご自分で気に入った医療機関がよいでしょう。ひとつの科だけではなく、いくつかの科に分かれていたほうが、よりたくさんの目で診てくれるのでより良いかと思いますが、これはお好みで。

みなさんは、この病気が一筋縄ではいかないものであることを知っているでしょう。だからこそのセカンドオピニオンなのです。もう一つ意味があるのですが、これはまたあとで。

医療機関に行くのすら大変なのに、さらにセカンドオピニオンまで!」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください。多くの病院では、主治医からのきちんとした診療情報があれば、ご家族の方の相談でも受け付けてくれます。

なお、受診する科は、自分が「この科の病気だ」と思った科でかまいません。他の科のほうが適切だと思えば、医師がきちんと紹介してくれます。

その際、「完全自費診療」の医療機関は避けたほうが賢明です。中にはとても優れた治療を行っている医療機関もあるのかもしれませんが、保険ではとても認められないような無意味な治療を行っている医療機関もあって、ハイリスク・ハイリターンです。

さて、では選んだ医療機関を受診しましょう。その際、これまでの症状の経過をA4の紙1枚にまとめておくと、何かと便利です。初診ですからそれなりに時間がかかるでしょう。もしかしたら、あちこち検査をすることになるかもしれません。

初めての診察の時には、「化学物質過敏症」ということばは口に出さない方がよいでしょう。それよりも、あなたがどのような症状に困っているか、その症状はいつ出るか、そのようなことを丁寧に伝えましょう。あなたの症状は、あなたしかわからないのです。どんな名医も、あなたが感じている苦痛は、あなたが伝えてくれないとわからないのです。

もしかしたら、初めてかかった医師に「自分の手に余る」と判断されて、他の医師を紹介されるかもしれません。そんなときは、無理を言わないでくださいね。「できないことをやらない」良心的な医師だったと思ってください。

あと、「甘ったれ病」「気のせい」なんて言っちゃう医者もためらわずチェンジ。そんな医者にかかってたら治るものも治りません。

ざんねんながら、長く付き合っていかなければならない病気がたくさんあることはご存知でしょう。そんな病気だった時に、共感となぐさめを提供するのも、また医師の大切な仕事です。最初から説教する医者は、間違いなくその仕事に向いてないのでチェンジしてしまいましょう。

長く付き合っていかなければいけない病気だった時に、共感となぐさめを提供し、親身になるのに長けているのは精神科医なのですが、本当は、すべての医師がこれに長けていなければいけないんですよね。

話はそれました。初診からいくらか時間も経ち、治療方針もあらかた決まったころになりました。ここで、セカンドオピニオンを受けることにしましょう。

もっとも、すでに初診の段階で治療を始めて、すっかりよくなることもあるかもしれません。ときどき、治療と診断を同時に行う場合があるのです。ある治療が効いたら、ある病気だったと後付けで診断するのです。それでよくなったのならば、わざわざセカンドオピニオンなど必要ありませんよね。

もちろん、そんなに一筋縄ではいかない場合の方が多いでしょうから、本格的な治療に入る前にセカンドオピニオンをお受けになられることをお勧めします。

さて、そのセカンドオピニオン。主治医との関係を恐れてなかなか切り出しにくい方もいらっしゃるでしょう。でも、そんなとき思い出してください。医学にはわかってないことがたくさんあることを。医師にもわからないことはたくさんあることを。だから、まっとうな医師なら、常に自分の診断や治療に疑いの目を持っています。そんな事情があるのですから、自分から積極的にセカンドオピニオンを勧められることもあるくらいなのです。横柄に頼むのは論外ですが、率直にご自分の気持ちを伝えましょう。一筋縄ではいかない病気だと思うので、ほかの医師の意見も聞いてみたいと考えるのは、自然な気持ちです。まっとうな医師は、そのことを十分に理解しています。もし、ここで嫌がるようなら、ほかの医師にためらわず変えましょう。セカンドオピニオンの頼み方については、静岡県立静岡がんセンターの以下のページが参考になるでしょう。

https://www.scchr.jp/cancerqa/jyogen_3500187.html

セカンドオピニオンでは、お聞きになりたいことをお聞きになればよいと思いますが、最低限次の二つはお聞きになられた方がよいでしょう。

・ほかの病気の可能性はないか

・ほかの治療法はないか

そして、セカンドオピニオンを受けられたら、必ずその結果を主治医に伝えてほしいのです。もちろん、セカンドオピニオンを提供している医療機関でも、主治医向けにお返事を作成しますから、それを読めば医師にはわかるのですが。

もしかしたら、それぞれの医師の意見が全く違うことがあるかもしれません。その時は、サードオピニオンを受けることも検討してください。さすがに3人の医師の意見なら、だいたい2対1になって、多い方を選べばよいと目安にはなります。さすがにそれ以上はあまりおすすめできませんが。

ここまできて、あなたが納得したら、初めて治療に入ることになります。どのような治療が行われるか、私にはまったく想像もつきませんが。せめて、その治療を安楽に終えられることを願います。

このような手順を踏めば、そんなに「ハズレ医者」に当たることはないでしょう。

民間療法

※ここでは、医師が選んだ治療以外の治療をすべて「民間療法」と呼びます。

民間療法には、さまざまなものがあります。効果がはっきりしているもののほうが珍しく、だいたいの場合効果ははっきりしません。

それでも、わらにもすがる気持ちで民間療法を試したいと思われる方がいらっしゃるかもしれません。

国立がん研究センターが、補完代替療法(ここでいう民間療法)について情報を出しています。

https://ganjoho.jp/hikkei/chapter3-1/03-01-11.html

これは、なにもがんに限らず、ほかの病気にもすべて当てはまることです。いちユーザーの私は、「自分にとって心地のよいこと」「場所やスタッフに不快な感じを受けなかったか」をとりわけ重視したい。もしかしたら、治療を受けるだけでもヘトヘトなのかもしれないのに、効果がはっきりしない治療でわざわざさらにヘトヘトになることはありません。心地のよいものを選びましょう。

ひきこもり界では、ひきこもりの当事者を強引にどこかの施設に連行して、スパルタ式にしごくなどの「治療」が問題になってますが、こういう「治療」は論外です。

転地療養も、自分にとって心地がよければ、悪くないでしょう。風光明媚な地に行って、のんびりするのは悪くないことです。

心地よい民間療法は、あなたに癒しのひとときを提供してくれるかもしれません。医学的な治療と両立するならばとの条件付きですが、心地よい民間療法を否定するつもりにはなれません。

さいごに

東京都が策定した、「都立病院の患者の権利章典」をご紹介しておきます。特に、納得いくまで説明を受ける権利や、納得いくまで質問をする責務、自分の健康状態を正確に伝える責務は重要です。当代きっての名医でさえ、あなたの症状はわからないのです。ぜひとも、あなたの主治医と、綿密にコミュニケーションをしてください。これがあって、はじめて医師と患者が治療に向かって共に歩めるのです。みなさんの早い回復を願っております。

http://www.byouin.metro.tokyo.jp/kenri/index.html