ふらふら、ふらふら

あっちこっちふらふらしている人間が何かを書いてます。

しわ寄せの再分配

タイトルが日本語になってないのは認める。だけど、次の二つのツイートを見て、どうしても書きたくなった。

https://twitter.com/sino_sstn/status/1234076160406900738

https://twitter.com/sino_sstn/status/1234079142972252160

またぞろ「自己責任論」がぶら下がっている。少しだけ憲法判例なるものをかじっているじぶんは、とある判決を思い出した。国によって義務付けられた予防接種を受けた結果、副反応で重大な後遺症を残した子どもとその親が起こした裁判に対する判決(昭59.5.18東京地方裁判所判決、判例時報1118号28頁)。

このようにして、一般社会を伝染病から集団的に防衛するためになされた予防接種により、その生命、身体について特別の犠牲を強いられた各被害児及びその両親に対し、右犠牲による損失を、これら個人の者のみ負担に帰せしめてしまうことは、生命・自由・幸福追求権を規定する憲法13条、法の下の平等と差別の禁止を規定する同14条1項、更には、国民の生存権を保障する旨を規定する同25条のそれらの法の精神に反するということができ、そのような事態を等閑視することは到底許されるものではなく、かゝる損失は、本件各被害児らの特別犠牲によつて、一方では利益を受けている国民全体、即ちそれを代表する被告国が負担すべきものと解するのが相当である。

もっとも、この裁判は複雑な経緯をたどり、最終的には予防接種に過失があったとして国家賠償の範疇とされた。

それはさておき、この判決が言っていることは、極めてまっとうなことと思える。COVID-19封じ込めのために、イベント等の自粛要請をするのは正当だし、違法性もない。だけど、それによって生じた損失は、一部の人がかぶる。他方で、COVID-19封じ込めによる利益は、すべての人が等しく受ける。これは明らかに不公平ではないか。

COVID-19封じ込めのために生じた損失は、封じ込めによって利益を受けたすべての人、具体的にはそれを代表する政府が負担するべきだ。

もちろん、イベント中止による損失だけではない。封じ込めのために行われた措置による損失は、すべて政府が負担するべきである。それはすなわち、封じ込めによって利益を受けるすべての人が、損失を等しく負担するべきということである。

将来、あなたがCOVID-19にならないとしたら、どこかにいる名もない人が、30万円もの借金を背負ってくれたからなのである。これすなわち、あなたのために30万円を払ってくれたのと同じ。その割に、あなたはたいして不便を被らなかったし、金銭的損失も受けなかった。これが、公平と言えるだろうか?

【ほんの少しだけ専門的な話】

憲法17条は、「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」と定めている。一方、憲法29条第3項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と定めている。

憲法29条3項に定めてあるのが、いわゆる損失補償。財産上の利益に「特別の犠牲」を、公共のために受けた時は、補償をしなければならないという趣旨。一方、憲法17条は、不法行為による損害に対し、賠償を義務付けている。ここで問題。生命・身体などに、公共のために「特別の犠牲」を受けた時に、補償が義務付けられているかどうか。家や土地を国のために差し出した人には損失補償をしなければならないと憲法に書いているのに、生命や身体を国のために差し出した人には損失補償の義務は(憲法上は)明文化されてない。法律学の世界では「国家賠償と損失補償の谷間」と呼ばれる問題。未だに解決ついてない。