知ってる人は知っているけれど、埼玉県の片隅で、「月曜茶話会」という集まりを細々とやっている。ひきこもり当事者や経験者だけで、昼下がりにお茶飲みながら駄弁ろうというだけの集まり。
そんな集まりの主催者の名義は、「月曜茶話会準備会」。中で活動している人間は今のところ自分一人なのに、仰々しい名前をつけたものだと自分でも(少しばかりは)呆れている。
とはいえ、それなりの思いを込めて名付けた。その思いが実現しているか、近い将来実現する見通しがあるかは別だけど。
「準備会」と聞いて、同人界隈にいる方ならすぐに思い浮かべるのは「コミックマーケット準備会」。これにあやかって名付けた。
コミックマーケットの重要な理念に、「お客様はいない」というものがある。この理念、自分はたいそう気に入っている。それにならって、「支援の担い手・受け手」のような区分けはしたくないと考えた。場に集まったすべての人が創り出す場として、「月曜茶話会」を運営したいと考えた。
場に集まった人すべてが参加者なので、「一般参加者」「スタッフ参加者」と呼んでいるのも、「お客様」を作りたくなかったがゆえのこと。事前準備はするけれど、当日の運営はみんなでやりましょうねとの思いを込めて「準備会」。ほとんど誰も読んでいないだろうけれど、準備会メンバーは常時募集中(ただし、一回でも一般参加をしたことがある方に限る)。いつでも、本人の希望によって、スタッフ参加・一般参加を自由に変えることができるとしたのも「お客様はいない」との理念から。
さらに、参加の対象を「ひきこもり同人」としているのも、ひきこもり状態にあった同志の集まりと自己規定しているため。ここから、「ひきこもり同人会」との表現が出てくる。いわゆる当事者会には近いものではあるけど、同志の集まりという側面をより強く出したくて、「同人会」と呼んでいる。
と、大風呂敷は広げてみたものの、それが実現しているわけではないのは自分もわかるところである。自分がスタッフ参加者から一般参加者になったら、あっという間に雲散霧消してしまうような集まり。後任は未だにいない。当分は、自分が中心になって運営していくしかないだろうと思っている。ただ、理想は「参加者みんなで運営していく月曜茶話会」。ある種のサークルのような感覚で運営されるのが一番いいと考えている。
準備会に「女子会やりたい」という女性メンバーが参加してくれれば、月曜茶話会準備会主催で女子会をやるのもやぶさかではない。もちろん、当日の会場の切り盛りはすべて「女子会やりたい」と言ってくれた女性メンバーに担ってもらうけど。
以上、月曜茶話会の理想と現実をつらつらと書いてきた。そんな思いで同人会をやってる目から、とある当事者会(以下、この記事では「A会」と表記)で発生した性に関する係争をどう見たか、少しだけ書いておく。
A会のサイトを見ると、運営メンバーと参加者の垣根はきっちり作られ、しかも、A会の運営する事業を「サービス」と表現している。明らかに、ここでは「サービス提供者・利用者」という関係があるように見える。そのような会で、サービス提供者が利用者と個人的な関係、それも性的なそれを持つのは、たとえ相手の同意があったとしても、倫理的に問題があるように見える。人が集まれば、そこに交流が生まれるのは当然のことで、その交流を否定するものではなく、むしろ促進したいと自分は考えているけれど、A会のサイトを見た印象では、運営メンバーは利用者と個人的な関係を持つのはご法度と思った。
今の月曜茶話会だって、決して「みんなで運営するサークル」としての実質を持っているわけではなく、だから、準備会代表を名乗っている自分が、一般参加者と個人的に性的な関係を持つのはご法度と思っているくらいである。運営メンバーと利用者の垣根をしっかり作っているA会なら、なおさら許されることではない。
確かに、自分だって林恭子さん・稲垣篤哉さんご夫妻のようなストーリーにあこがれはするのだけど、現状ではそれは無理だとはっきり認識している。もし仮に一般参加者と恋愛関係を持つとしたら、自分が代表を降りて、一参加者になった時か、あるいは相手が準備会メンバーになったときか、どっちか。要は恋愛関係は対等でなければ作れないと思ってる。
最後にまとめ。運営メンバーと参加者と垣根を作っている限り、決して対等な関係にはならないし、そのような状態で恋愛関係になるのはアンフェアだ。やりたいなら、皆が対等でフラットな関係であるサークルのような運営を目指さなければいけなかった。だけどそれは月曜茶話会では未だに実現してないので、なかなか難しいというお話でした。
参考
「コミケットマニュアル(コミックマーケット86サークル参加申込セット版)」コミックマーケット準備会
AERA2018年3月5日号90ページ「はたらく夫婦カンケイ」
不登校新聞第470号「連載「あのとき、答えられなかった質問」最終回
“脱ひきこもり”のきっかけは? 経験者の回答」稲垣篤哉