ふらふら、ふらふら

あっちこっちふらふらしている人間が何かを書いてます。

救急外来に、自動車を運転して行くのが「当たり前」と考える先に、東池袋の事故がある

 以前、函館に行ったときのこと。耳の聞こえが突然悪くなった。あいにくと、その日は日曜日。北海道庁のWebページを見ると、耳鼻科の休日当番医が診療しているとのこと。その当番医の診療所に、市電とバスを乗り継いで出かけた。市電はそこそこ乗客がいたものの、バスはほとんど乗客がいなかった。

 医師に診てもらったら、いつもの耳垢栓塞で、ちょちょいと吸引してもらったら聞こえは元通り。わたしの耳垢はとても取りにくく、耳鼻科で取ってもらわないといけないような耳垢なので年に一回くらいはそんなこともある。

 処置の後、医師と雑談。「レンタカーで来たの?」との問いに、「路線バスで来ました」と答えたらたいそう驚かれた。えっ、ちょっと待って、ここは一応救急外来で、そんなところに車で運転して来ていいものだろうか?実際、診察室から出たら、わたしの前に診てもらった患者さんが救急車で大きな病院に運ばれるところだった。いくら診療所とはいえ、救急外来ってそんなところ。クルマを運転して来るような場所ではない。

 クルマを運転するのが当たり前になってしまっている今の社会を象徴する体験だった。体調が悪くても、睡眠不足でも、当たり前のようにクルマを走らせる。こどもを公園に連れて行く時も、当然クルマだ。そんな生活をし続けた先に、高齢ドライバーの問題はある。

 何年か前に東京の東池袋で高齢ドライバーが死亡事故を起こした。あの時、「加害者」に強烈なバッシングが起きた。しかし、事故を起こした高齢ドライバーに石を投げつけられるひとがどれだけいるのだろうか。何しろ、救急外来にさえクルマで行くのが当たり前の社会だ。そんなこんなの行きつく先が、東池袋で死亡事故を引き起こしたドライバーだ。決して他人事ではない。明日の「あなた」である。