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パンデミックの影響を強く受けるのは「日本型福祉社会論」による「標準」から外れた人

 「日本型福祉社会論」と言われてもたいていの人はわからないが、下の記事にあるような思想だ。

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 わたしなりに説明すると、企業の福利厚生、それに支えられた「家族」が主な福祉の担い手になるって思想だ。「日本型福祉社会論」では、次のような「家族」が「標準」とされる。

 

 学校卒業後正社員としてバリバリ働く夫。会社の業務命令あれば、全国どこにでも転勤するし、残業もいとわない。そんなだから、当然家庭のことなどできるはずもない。しかし、夫は、企業が提供する手厚い福利厚生を得ることができる。安定した収入も保障される。一方、家事育児をするのは専業主婦である妻。妻は、夫の友人であり、家政婦であり、またセックスパートナーとしての存在でもある。家計補助目的でパートに出ることはあるが、基本的には夫の収入によって家庭を切り盛りすることになる。

 

 こんな家庭を営むことが「標準」とされる。なので、たとえばパート・アルバイトは家計補助目的であるとされ、正社員と同様の保障は必要ない(とされてきた)。結果、今ではパート・アルバイトによって生計を立てなければならない人たちも増えたのに、相変わらず家計補助目的で働いている人ばかりの時と同じような待遇。横道にそれるが、正社員の既得権益は、男性の既得権益でもある。労働組合は男性の既得権益のみを守ってきた。本題に戻る。パート・アルバイトには正社員と同様の保障は必要ないとされてきたのだから、安易にクビを切られる。男性が多い正社員の雇用が最後まで守られるのと対照的だ。

 「日本型福祉社会論」で「標準」から外れた人たち―すなわち、「正社員」ではなくパート・アルバイトで生計を立てている人たち、あるいは「正社員」として働いている男性と円満な関係ではない女性たち。こういう人たちに影響が強く出る。

 そもそも、Stayhomeなる言葉自体、「日本型福祉社会論」で「標準」とされている「家族」から外れた人たちがとても不利な状況に置いている。例えば、パート・アルバイトで生計を立てていて、企業の福利厚生も受けられず、低額の賃貸住宅に住んでいるような人たち。この人たちは、低水準の住宅の中で、過酷な生活を送っている。民間の賃貸住宅も、結婚して家を買うまでの「仮住まい」前提だから、低水準でオーナーの収入を最大化することのみが考えられている。終の棲家としても機能するような品質保証などされてない。

 あるいは、「日本型福祉社会論」で「大黒柱」として位置づけられている男性と結婚してはいるものの、その男性と円満な関係ではない女性(はっきり言ってしまえばドメスティックバイオレンスの被害者であるような女性など)は、「大黒柱」たる男性の支配力が強まる現状にじっと耐えているのではないか。

 昨年の自殺統計を見ていると、「日本型福祉社会論」で「大黒柱」として位置づけられている男性の自死が減り、逆に女性の自死が増えた。男性にとってはたいそう心地いい社会が、女性の犠牲によって作られた、と書いては言い過ぎだろうか。