ふらふら、ふらふら

あっちこっちふらふらしている人間が何かを書いてます。

社会保障と会社保障

 このツイートである。

  おおむね、「医クラ」と呼ばれる人たちは、職域接種の不公平さから目を背けようとしている。職域接種が不公平であることは、千葉県知事の熊谷俊人さんがFacebookで指摘したとおりである。その指摘を以下引用。

本来、職域接種は自治体接種を補完するものであって、職域接種のために自治体接種が遅れる、予約を停止する事態はあってはならないことです。
自治体接種は対象者が公平に予約・接種が可能なのに対し、職域接種は大企業等の関係者のみが優先的に接種できます。
職域接種は不公平ではありますが、自治体接種に影響が無ければ一般の方が自治体接種を受けやすくなりますので、65歳未満の自治体接種が殆ど始まっていない状況で職域接種が始まるのもやむを得ないと受け止めていました。
しかし、今は職域接種を受けられる人がいる一方で、65歳未満の接種予約が停止・制限されていく状況にあり、これはどう考えても不公平です。

熊谷俊人さんの7月3日付Facebook投稿

  それでも、「医クラ」のみなさんは、現実に存在する不平等から目を背けようとしている。この議論、そもそも論を言い出せば、労働分野での議論までさかのぼらなければならないので、医師の知識の外にある。そもそも論って?つまりこう言うことですよ。

eulabourlaw.cocolog-nifty.com

 日本では、「社会保障」ではなく「会社の福利厚生」が人々の生活を支えてきた。その結果、「社会保障」は手薄になっていった。自民党も、「一家」の生活に必要なものを男性労働者が勤める企業から受け取る「日本型福祉社会」を推進してきた。「ひきこもり」に関わっていると、そのことをいやと言うほど痛感する。働いている人が当たり前に会社から得ている様々な生活保障が一切受けられない。住宅にしても、健康診断にしても。ひきこもりのひとに健康診断や住宅はいらないんでしょうか?と問題提起したくなる。ときどき、会社で健康診断を受ける機会がない若い人たちに健康診断を提供している自治体もあるが。

 そうして、「社会保障」の代わりをを「会社保障」が果たすような社会を作ってきてしまったのだから、本来なら「社会保障」の一つである予防接種を「会社保障」として提供するのも仕方ないことではあった。

 とはいえ、今となっては、「会社保障」など会社の思惑次第でどうにでもされてしまうのだから、「社会保障」を代替させてはならなかったこともわかりきっている。

 これを踏まえてわたしの意見。「会社保障」を生活保障の中核として位置づけてきてしまった現状では、職域接種は「しないよりはマシ」であった。しかし、それでも、「会社保障」を誰もが受けられるものではないことに留意しなければならない。今後は、「社会保障」を厚くしてゆき、「会社保障」を縮小する必要がある。もちろん、企業の税負担は増やさなければならないが。

 ところで、この問題、意外なところで女性蔑視とも結びついている。自民党が掲げた「日本型福祉社会」では、男性は自らの稼ぎによって妻を「得て」、養う。それは妻に対する支配と表裏一体でもある。そのような社会で、男性が女性のことを自らの甲斐性によって得る「獲物」と考えるのもむべなるかな。それが小田急線車内でのフェミサイドにもつながった。このあたりのことは少し前にわたしが別の記事で書いた。こちらもどうぞ(そして、その記事で紹介している短編小説もぜひ)。

syou-hirahira.hatenablog.com