ふらふら、ふらふら

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鉄道をめぐる環境が日本と大きく違う北欧は参考にできない

 今、この記事がバズっている。

anond.hatelabo.jp

 うーん、鉄道の位置づけが日本とは違う国を引き合いに出しても、と。日本国内でもたとえば北海道と関東近郊では様相が異なる。

 わたしは、2012年夏、北海道に行った。当時青森から札幌の間を結んでいた夜行列車「はまなす」で札幌に降り立った時、一番最初に驚いたことは、列車の到着をいちいち案内していたこと。札幌終着の列車でも、どこどこ方面からの列車が到着しますと案内していた。さらに、コンコースに降りると、列車の到着案内の電光掲示板が設置されていた。これまた、列車の始発駅と、札幌駅の到着時刻、定刻通りに着いたか、あるいは遅れて到着したか、はたまた遅れて到着する見込みか、そこまで案内していた。おそらく、列車で来る人を出迎える人のための表示だろう。札幌近郊はともかくも、北海道全体を見渡すと、鉄道で移動するのは非日常だ。それこそ時刻表を見て、数日前から計画して、列車に乗る。関東近郊、あるいは東海道新幹線のように、駅にふらりと行って来た電車に乗るなんてことは考えにくい。この感覚、さほど鉄道システムに詳しくないわたしが言葉にして伝えるのは難しいが、とにもかくにも、道路を歩く感覚で鉄道に乗る(御茶ノ水駅はそのような乗客を前提に設計された)なんて環境ではなかった。

 鉄道がどれだけ利用されているかを測る尺度に、輸送密度がある。平均通過人員とも言う。日本民営鉄道協会の解説が比較的わかりやすい。

www.mintetsu.or.jp

 とりあえずは、高ければ高いほど多くの人が乗っている、と理解してほしい。さて、北欧の鉄道輸送密度。これは、国土交通省の政策課題勉強会の資料に詳しい。国ごとの比較も載っている。

www.mlit.go.jp

 資料の3ページを見ると、デンマークはともかく(それでも日本なら間違いなくローカル線と分類される)、ノルウェースウェーデンフィンランドは日本よりもはるかに乗客が少ない。正確な数値は読み取れないが、どうやらJR北海道よりも遥かに乗客は少なそうだ。

 さっき、北海道を旅した時に感じた感覚を話した。北欧の鉄道の乗客はその北海道よりも少ない。鉄道を日常的に利用するような環境ではないと推測できる。そういう地域の鉄道と、日本の鉄道は環境があまりにも違い過ぎる。

 その環境の違いは、「定刻発車」についての意識にも違いがある。日本の場合は、とにかくたくさんの乗客をさばくために秒単位での定刻運行が求められた(それが、1分30秒の遅れを取り戻そうとした結果の事故につながったのだが)。一方、ヨーロッパでは、乗客が少なければ当然列車本数も少ない。そんな鉄道だと、15分以内の遅れは「定刻運転」として済まされるし、仮にそれ以上遅れたとしても大した問題にはならない。このあたりのことは三戸祐子定刻発車」(新潮文庫)に詳しい。

 まとめ。鉄道をめぐる環境は、ヨーロッパと日本では大きく違う。その違いを無視して、安易に比較することはできない。 

www.hanmoto.com