ふらふら、ふらふら

あっちこっちふらふらしている人間が何かを書いてます。

豊かな人が負うべき重い責任

※この記事は、どちらかというと医学的知識よりも倫理的なことを書いてます。医学的な話は厚生労働省のサイトなど、しかるべきサイトを参照ください。

新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会のnote。

note.stopcovid19.jp

 この中に、「人と会う機会を8割減らす」「外出は、散歩、ジョギング、食料品の買い出し、通院、行く必要のある仕事程度にとどめてください」とあって、ため息をつく。生活保護受給世帯の居住実態に関する調査の集計結果*1を見たからだろう。この結果によれば、東京都内で生活保護を受けている単身世帯のおよそ2割は、自宅に浴室がない。こういう人にとって、「人と会う機会を8割減らす」というのは、すなわち、入浴の頻度を最低でも5日に一回に下げなければならないってことだ。普段2日に一回なら、10日に一回の入浴にしなければならない。

 わたしのTwitterのタイムラインにもいましたよ。自宅にいるのが危険で、シェルターに避難した10代の方が。その方、自宅にとどまらなかったことにものすごい罪悪感を抱いていた。

 単純に、人と会う機会を8割減らすのは、より豊かでない人ほど、危機的な状況に追い込むことになる。より豊かな人ほどより重い責任があると考えなければならない。

 東京都内全体で、人と人との接触を8割削減しなければ感染拡大は収まらないという。残りの2割をどこに配分するか。もちろん、自宅にいるのが危険な人たち、あるいは自宅に浴室もないような豊かでない人たちに優先的に配分しなければならない。都心部タワーマンションに暮らしているような豊かな人たちへの枠は、2割よりもっと削減しないとならない。わたしの実感だと、だいたい平時の5%くらいにまで削減していただく必要がある。

 日頃、街で遊んだりいい思いしていたでしょ?月に1回しか買い物に出かけられず、保存食ばかりの生活になったとしても死なないだけよいと考えましょう。もしかしたら、一時的に退職しなければいけないかもしれない。でも、もともと高所得だったんだから、貯蓄を切り崩せばいいじゃないですか。もともと高所得だったんだから、再就職もそんなに難しくないでしょう。一時的に生活の優先順位を変えましょう。買い物にすら行けないことを嘆く時間を、これまで貧しい人たちの生活を放置してきたことを反省する時間にしましょう。貧しい人たちは、それこそ自宅に浴室もないのにずっと耐えてきたんです。それに比べれば、自宅に浴室はある、ネットも使える、窓から夜景も見える、そんな生活は十分に贅沢ですよ。買い物に行けないからってネット通販使うのも論外ですよ。倉庫で働く人、配送してくれる人をあなたの贅沢のために危険に晒す権利はないと心得ましょう。

もうひとつ。

公庫や行政がこれだけ手厚い補助をしているのに「めんどくさい」から借入・助成手続きをせずに、手っ取り早く「家賃を払わない」選択をする賃借人が登場したので、毎日朝9時に公庫の4号融資と厚労省の雇用助成金、住宅確保給付金それぞれの申込書を日付入りの特定記録で郵送する。

— 新宿シュガーレス (@Sugarless_kid) April 3, 2020

  わざわざそんなものを特定記録で送るくらいなら、これまでちゃんと家賃払って住んでくれていたことに感謝して、一時的に家賃免除しましょうよ。それで賃貸経営が回らないなら、それこそ自分自身が公庫の融資を使うなりすればいいだけのことじゃないですか。それが「手厚い補助」ならば、家賃を免除してもいいじゃないですか。あなた方が自民党を支持してきたことは知ってます。その自民党の政策が手厚いというのですから、あなた自身がご活用ください。自粛要請で商売あがったりの業界はたくさんあります。大家だけは減収を免れようなんて、あまりにも都合がよすぎやしませんか?

 大家だって苦労して財産を築いた、そうおっしゃる声も聞こえます。しかし、そこでちょっと考えてください。昨年の東京大学の入学式の祝辞で上野千鶴子さんは「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。」と述べられました。あなたが自分の努力で築いたと思っている財産。あなたが財産を築くためにした努力も、それができる環境にあったからです。ましてや、親から相続したのならなおさらじゃないですか。

 わたしだって、そんなに貧しいとは言えない。それだって、別に自分の努力のおかげですべてやってこれたとは思わない。だから、自分なりに負うべき責任は考えているつもりです。だけど、わたしよりさらに豊かな人たちには、さらに重い責任がありますよ。この期に及んでウーバーイーツ頼んだり、Amazonで買い物したり、そういう傲慢なことはやめましょう。そして、教皇フランシスコの次の叫びに耳を傾けましょう。*2

あなたがわたしたちよりもずっと深く愛しておられるこの世界で、わたしたちは目まぐるしい速さで突き進み、自分が強力で何でもできると思い込んでいました。利益を貪欲に求め、物事に没頭し、あわてふためき混乱していました。あなたの呼び声を聞いても立ち止まらず、戦争や地球規模の不正義を前にしても目を覚まさず、貧しい人の叫び声にも、ひどく痛めつけられている地球の声にも耳を傾けませんでした。わたしたちは病んだ世界でつねに健やかに生活する方法をあくまでも考え続けてきました。