ふらふら、ふらふら

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東京の過密が生み出す「道路族問題」

 先日松本に出かけてきたことはすでに記した。松本を歩いていて街が広々としていることを実感した。広々とした通り、公園、緑地。どこを歩いても広々としている松本の街は、東京とは対照的だった。東京ではあらゆるものがすき間なく詰め込まれている。ひとも、ものも、建物も。それゆえに、東京の土地には希少価値が生まれており、東京のあらゆる土地は市場で売り買いされる商品になっている。

 そのような街では、松本のようにだれもが自由にのびのび遊べる「誰のものでもない」場所である公園や緑地をつくるすき間はない。確かに東京にも公園や緑地はあるが、休日ともなれば大きな公園はひとでいっぱいで、のびのび遊べる環境ではない。さらに極端な例になると、公園そのものが市場で取引される商品になっているところもある。渋谷区のMIYASHITA PARKのように。東京では、土地を使う権利も私的に購入するものになっていて、こどもが遊ぶ場所も私的に購入するものとされてしまっている。

 そんな状況では、あらゆるものが私的に購入されるべきものであるとの観念が一般化している。それは、「道路族被害」を訴えるひとたちも例外ではない。むしろ、「道路族」被害を訴えるひとたちのほうが、あらゆるものを市場で購入するべきだとの考えをより強く持っている。実際、「道路族」による被害を訴えるひとたちは、ほぼ一貫してこどもが遊ぶ場所は親が市場で自ら購入せよと主張している。その一貫ぶりはある意味感動する。そんな状況の中で、「道路族」による被害を訴えるひとたちは、自らが市場の勝者であり、他者が市場の敗者であることを熱心に主張する。「道路族」被害を訴えるひとたちが鵠沼松が岡の写真を「スラム」などとレッテル貼りをしたのは典型的な例である。自らが市場の勝者であると常に主張し続けないと、「市場の敗者」として東京から追い出されるからだ。あらゆる土地が市場で取引の対象にされる東京には、「市場の敗者」がいられる場所はとても少ない。そんな東京の街は、見る角度によっては、とても荒涼とした風景に見える。

 東京の過密が、あらゆる土地を市場で売り買いされる商品にしている。道路で遊ぶこどもにしても、現実にほかに遊び場が見つからない。遊び場は、自ら市場で購入しなければならないのが現状だ。しかし、いちいち遊ぶたびに遊び場を使う権利を購入できるほど裕福な親ばかりではない。その結果が、土地を自ら購入する商品と捉え自らの所有権を徹底的に主張する「道路族被害者」と、道路で遊ぶこどもや親との争いである。これが「道路族問題」の本質だ。

 都市は適度さを取り戻さなければならない。過密になっていて、あらゆる土地が市場でやり取りされる商品になっている東京の都市環境を改善しなければならない。そして、市民が公共の場所や緑地を持つ権利を守ることが必要だ。

 そのために、東京一極集中を是正しなければならない。何もかもが東京に一極集中しているから、東京は過密になる。何もかもが一極集中しているから、無理にでも東京に住まなければならない。東京以外の都市を育成し、「多極集中」型の国土を作るのが理想だ。ひとつの都市に一極集中するよりも、たくさんの都市を育成することが、日本に住むひとすべてにあまねく都市化の恩恵をもたらすことになる。都市化の恩恵を、東京に住めるひとの専有物にしてはならない。

 最後に、沖縄県立中部病院の感染症医である高山義浩さんが「人と国土21」(国土計画協会)2020年9月号に寄稿した文章を引用して終わりにする。

 これを機会にして、都市は適度さを取り戻していかなければならない。あの満員電車の異常さに気づくべきだ。都市への集中を減らして、代わりに、広くて緑豊かな歩道、その先にある公園、歩いてゆける開放的なコミュニティスペース、子供たちそれぞれの成長を支える学校・・・ ストレスのない環境を作っていこう。それこそが感染症に強い社会を作っていくことになるはずだ。

(高山義浩「感染症に強い社会形成に向けて」『人と国土21』国土計画協会、2020年9月)

松本市・見晴橋周辺から撮影した薄川緑地。北アルプスの山々を望む。

松本市・薄川緑地

 なお、この記事はChatGPTの支援の下作成しました。また、わたしに言葉を与えて下さった経済学者の宇沢弘文さんに感謝申し上げます。

 

 かつて、下の記事を書いたが、今(2023.10.31)現在はやや考察が甘かったと考えている。道路を自動車の専有空間とすることは指摘していたが、こどもの遊び・育ちを商品として市場で取引するものにしてしまうことへの考察がなかった。

syou-hirahira.hatenablog.com

続きのようなもの

syou-hirahira.hatenablog.com